
この記事のポイント
- 遺言の主な形は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つです。
- 自筆証書遺言は手軽ですが、書き方の決まりを外すと無効になるおそれがあります。
- 法務局の保管制度を使うと、自筆証書遺言でも家庭裁判所の検認が要らなくなります。
- 確実さを重視するなら公正証書遺言、手軽さと費用を重視するなら保管制度を使った自筆証書遺言が、一つの目安です。
なぜ遺言を残すのか
遺言がない場合、遺産の分け方は相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。相続人が多い、連絡がとりにくい、関係が複雑といった事情があると、この話し合いが大きな負担になります。
遺言があれば、財産を誰に残すかを自分で決めておけます。特に次のような場合は、遺言を考える意味が大きいとされています。
- 子どもがいないご夫婦(配偶者のほかに、親や兄弟姉妹も相続人になることがあります)
- 家を継ぐ人に、自宅や農地をまとめて残したい
- 相続人ではない人(お世話になった人・孫など)に財産を残したい
- 再婚していて、前の配偶者との間に子どもがいる
2つの遺言の違い
| 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
|---|---|---|
| 作る人 | 本人が手書きで作る | 公証人が、本人の話を聞いて作る |
| 費用 | ほとんどかからない(保管制度を使うと手数料3,900円) | 公証人の手数料がかかる(財産の額によって変わる) |
| 証人 | 要らない | 2人以上が必要 |
| 無効になるおそれ | 書き方の決まりを外すとある | 低い |
| 原本の保管 | 自宅など。保管制度を使えば法務局 | 公証役場 |
| 家庭裁判所の検認 | 必要(保管制度を使えば不要) | 不要 |
自筆証書遺言のポイント
書き方の決まり
自筆証書遺言は、次の決まりを守る必要があります。
- 本文・日付・氏名を、本人が手書きする
- 押印する
- 財産の一覧(財産目録)は、パソコンで作ったものや通帳のコピーでもよい。ただし、目録のすべてのページに署名と押印が必要
日付を「令和8年10月吉日」のように特定できない書き方にする、夫婦で1枚の紙に一緒に書く、といったことで無効になることがあります。
法務局の保管制度
2020年7月10日から、自筆証書遺言を法務局で預かってもらえるようになりました。
- 手数料は3,900円で、保管料はかかりません
- 法務局が形式(日付・署名など)を確かめてくれます(内容が有効かどうかまでは確かめません)
- なくしたり、書き換えられたりする心配がありません
- 亡くなった後の家庭裁判所の検認が要りません
- 申請には予約が必要で、本人が法務局へ行きます
公正証書遺言のポイント
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作る遺言です。本人が遺言の内容を伝え、公証人が文章にし、証人2人の立ち会いのもとで作ります。
- 形式の不備で無効になるおそれが低い
- 原本が公証役場に保管される
- 検認が要らないため、亡くなった後の手続きにすぐ使える
- 体調によって公証役場に行けない時は、公証人に自宅や病院へ来てもらえる場合があります
費用はかかりますが、確実さを重視する方、財産が多い方、相続人の間でもめるおそれがある方には、公正証書遺言がすすめられることが多いです。
どちらを選べばいいか
- まず形にしておきたい、費用を抑えたい保管制度を使った自筆証書遺言
- 確実に残したい、財産が多い、内容が複雑公正証書遺言
どちらの形でも、遺言は何度でも書き直せます。家族の状況が変わった時に見直すことも大切です。
遺言を書く前に考えておきたいこと
- 遺留分配偶者や子どもなどには、最低限受け取れる取り分(遺留分)があります。偏った内容にすると、亡くなった後に相続人どうしの争いになることがあります。
- 遺言執行者遺言の内容を実際に手続きする人を、遺言の中で決めておくと、手続きがスムーズになります。
- 付言事項なぜこの分け方にしたのか、家族への想いを書き添えることができます。法的な効力はありませんが、ご家族が受け止めやすくなります。
まとめ
- 手軽さなら自筆証書遺言、確実さなら公正証書遺言。
- 自筆証書遺言は、法務局の保管制度を使うと安心です。
- 書く前に、遺留分と遺言執行者のことも考えておきましょう。
当事務所では、遺言の内容の整理から、文案の作成、公証役場との調整、保管制度の手続きのご案内までお手伝いしています。何を書けばいいか決まっていない段階でも、ご相談ください。
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この記事は2026年10月時点の制度にもとづく一般的な説明です。個別の状況によって手続きや期限は変わります。


